インタビュー
RED GARDENスペシャルインタビュー第3弾。
『RED GARDEN』では、登場するキャラクターたちの顔だちやファッションなどのデザインすべてを司っている藤純さん。監督とも対等に渡り合えるくらい、強烈な個性を放つ彼女。そんな藤純さんの視点で捉えた『RED GARDEN』の魅力を、お伝えしよう。。。
TEXT:長澤智典
やりたい放題、、、藤純さんなりの美学とは。。。
−−まずは、藤純さんの『RED GARDEN』内での仕事内容から教えてください。
作品へ登場するヒロインたちはもちろん、登場する様々な人たちのキャラクター・ビジュアル面全般へ関わっています。それこそ、「このシーンでは落ち込んでる表情を見せるから、こういう洋服にしよう」「戦いに巻き込まれゆくシーンだから、スカートはやめておこう」などなど…。まして彼女たちは、悲惨な状況へ夜毎に置かれながらも、翌日には学校へ普通に通ってるように、いつもと変わらない日常の中、必死に生きようとしてる子たちばかりじゃないですか。女の子って、そういう気持ちが普段の何気ないファッションやお化粧にも現れてくるものなので、そこも上手く表現していけるようがんばっています。
−−アニメのキャラクターと言えば、同じ服を着っぱなしが多いですけど、『RED GARDEN』では、ほとんど毎日全員が当たり前のよう着替えてますからね。
だって現実では、毎日洋服を着替えるのって当たり前のことじゃないですか。そういう“当たり前”を描きたくて始めたんですけど…制作的には、どれだけムチャクチャ大変なことなのか…と言うのを、みずから体験しながら感じました(笑)
−−これまでのアニメにはなかった、かなり斬新なビジュアルですからね。
松尾監督の手がけた『ローゼンメイデン』は好きで、毎週見てましたが……とはいえ、そもそも私自身、アングラな世界が本拠地というか、なので・・・普段からアニメを観るタイプじゃなかったんですよ。だから監督から依頼をいただいたときも、最初に「私アニメを観ないんですけど、大丈夫ですか?」と聞いたんですね。そうしたら監督が、「だから、いいんですよ」と言ってくれました。その言葉を私は「やりたい放題やっていいってことだ」と捉え(笑)思ったことをどんどん提示させてもらったんです。。。結果的にそれらは、「この世界には前例のないこと」ばかりだったし、それを形にするのも非常に大変だったんですけど。そこが、『RED GARDEN』の持つ“他に類を見ない斬新さ”へ繋がっていったわけですからね。
主要キャスト5人のファッション設定の秘密
−−その斬新さの内容は後でお聞きしますが。まずは、各キャラクターのファッション設定をお聞きしても良いですか?
全体的に意識したのが、舞台がNYでアメリカへ住む女の子たちが主人公とはいえ、ある程度日本の流行モードも反映させてることです。
まずレイチェルは、お母さんがモデル出身で、そのイメージがブリジット・バルドーだったんです。あくまでも、個人的なイメージなんですけど(笑)なので、レイチェルの母親も、その印象で描きつつ。きっとレイチェル自身が、お母さんの昔の写真を眺めながら「お母さん素敵!!」と憧れを抱いてるんじゃないか…と思ったことから、母親の服装からの印象もリンクした、バービー人形みたいな洋服を好んで着せてます。
クレアはいわゆる下町に住む子ですから、服装も割と、ストリート・カジュアルな雰囲気を出した、いわゆるB-GIRL系ファッションです。
ケイトの服装は完全にブリティッシュ系を意識。チェック柄とか、割とタイトなデザインが多いですね。彼女が学校で所属しているグレースの制服が人気があるらしく、コスプレしている子もいるらしいんです。それがまた嬉しいですよね。
ローズは、あまり裕福な家庭ではないことから、きっと自分で洋服も作ってしまうような子…という印象を持ったんです。実際に作品の中でも、生地を買いに行くと思しき会話のシーンも出てきますし。だから彼女の場合、同じデザインのベビードール系のワンピースを着てることが多いんです。つまり、同じ型紙を使いながら、違う生地で洋服を作成してる…というように。。。彼女に関しては、年齢の割に幼く見える雰囲気も作りあげたことから、ロマンティック系のファッションも多いですね。
リーズは、5人の中では一番普通に男の子にモテるタイプだろうということから、今の時代の中で一般的な男の子が「あの子っていいよな」って思うような女の子として、ヘアースタイルもファッションも施しています。
1話ごとに描きあげゆく洋服の枚数は。。。
−−各話数ごと、どれくらいの洋服をデザインしてるんですか?
1話につき、毎回大体20着は描いてるんですよ。きっと最終話まで描き切る頃には、ものすごい数になってるはずです。時には、上着は一緒だけど下だけ着替えたりなどの使い回しのファッションも出てきますけど。それでも、そうとうな数を描いてますし、何よりも、幼稚園児からおじいちゃんまで描いてますからね。
−−以前、第1回目の放送の先行試写会をやったときに、藤純さんや松尾監督がゲスト・トークショーを開催しましたけど、その席で、「私は年齢の高い方は描けないんです」と言ってましたよね。
はい。登場してくるおばあちゃんなど年配の方々は、私描いてないです。と言うのも、おばあちゃんを描き始めると、皺の弛み一つ一つが気になってしまうんですね。しかも描くたびに「私も年齢を重ね続けていくと、こうなるのね…」と思ってしまう。そうやって未来の自分の姿を投影し、それを絵を通しリアルに感じてしまうのが嫌なんですよ。だからその手の絵は、なるべく石井久美さんにお願いしてます。ホント石井さんには、ご迷惑をかけっぱなしです。。。
−−それでも、いくつかは手がけてるんですよね。
理事長は描きました。それと、先にも言ったようレイチェルのお母さんだけは、ブリジット・バルドーというイメージがあったので描いてます。私、グラマラスな女性を描くのが好きですし、そういう女性って、身体の曲線フォルムを描くだけで絵になるから好きなんですよ。その代わり、他のヒロインたちのお母さんは一切描くことなく、「すみません、石井さんお願いします」という状態になってます。。
派手やかな絵柄の背景に隠された、緻密な計算。。。
−−藤純さんと言えば、こだわり派な松尾監督とつねにガチンコで勝負し、対等に意見を言い合ってる方…という印象が、とても強いんです。
監督には申し訳ないくらい、言いたい放題言ってます(笑)だけど、こうやって大勢の人たちが関わりながら一つの作品を作りあげてく場って、監督が先導する舵に合わせ進んでいく大きな船だと私は思ってるし、監督が描きあげたい作品を具現化してゆくクルーの一人という意識を強く持っているからこそ、監督とはつねに蜜な関係のもと、意志の疎通を図っていきたいし。そこでの疎通がしっかり取れてないと、それが作品にも現れてしまうと思うんですね。とくに私なんか、完成ラッシュを観ながら、「あそこはこうしたほうがいいんじゃない?」など、私の分野外のことにまで口を出してますからね(笑)。だけど、それだって最高の作品を作るためには必要なことと言うか、クルーが一丸となって向かっていくって、そういうことだと私は思ってしまうんですよね。
−−その気持ちが、いろんな好反響を得ているのも事実ですからね。
そうなんですよね。個人的な話になってしまいますけど、私のデザイン・キャラクターたちを観て、私自身のHPへ遊びに来ては、「私、あの洋服が好きです」など、いろんな感想をみなさんが残してくださるんです。そうやって私の描いたデザインやファッションにシンパシーを感じていただけてるのが、ホント嬉しいんです。とくに女性からそういう声を聴くと、ことさら嬉しくなりますよね。
−−あの派手やかな絵柄を動かすうえでの大変さも、じつはいろいろとあるそうですね。
あの艶やかな姿を動かすのは、とても大変なんです。たとえばタータンチェック柄の洋服一つを描く上でも、「何色までなら使えます」「線の太さはここまでなら大丈夫です」と制限が出てきたり。水玉模様一つにしても、「この大きさまでの水玉模様なら動かすうえでも支障はないです」とアドバイスを受けたり。始めは「えっ、何で?」と思ったことでも、実際に絵になって動き始めると、それが最適ってわかるんですよね。やはりそこは、長年アニメ制作へ携わってくださっている方々だからこその経験値なんだろうし、そのアドバイスが、すごく役に立っているのも事実です。ホント、総作画監督の石井さんや各話担当の作監さんたちには、頭が上がりません(笑)
『RED GARDEN』はアニメの限界に挑戦中!?
−−そもそも、あの個性的なキャラクターたちを動かすこと自体が、アニメの世界では至難の業ですからね。
海外もののドラマを観ているような感覚を感じるかもしれませんね、登場キャラクターたちも、ほんとリアルに描いてます。それこそ普通のアニメには無いキャラクターたちだからゆえに、動かすのもホント難しかったようですけど、役者さんらも「こういうビジュアルのキャラクターを演じられてるのが、すごく新鮮で楽しい」と言ってくださってるように、そこは本当に嬉しいですし。この『RED GARDEN』が、新しい価値観を持ったアニメ作品の先駆けになっていけたら、もっともっと嬉しいことですから…
−−グラデーション一つを取っても、すごく大変な作業ですもんね。
グラデーションの作業は、ホント大変だと思います。レイチェルに至っては、髪の毛を脱色しているので、本来は黒一色である髪の実線を、別の色にトレスしてるんです。そういう細かい描写まで、松尾監督は「現実化可能なことならすべて演ろう」という意識で取り組んでくれてますし。松尾艦隊に乗ったクルー全員が、これからのアニメ界の先駆けになることをやってやろうという意識で取り組んでますからね。
−−その成果、期待しています。じゃあ最後に、藤純さんから観た『RED GARDEN』の見どころをお願いします。
私の個人的な視点でいいですか?
−−どうぞ、どうぞ。。。
クレアとユアンや、レイチェルとルークの恋の行方が、すっごく気になるんです。『RED GARDEN』に描かれてる恋愛模様って、ホント生々しいですよね。私からすれば、「うざいこの男!」と思ってしまうんですけど。でも男性側から言わせると、「男こそ被害者だよ」と。。。確かに、冷静に物事を捉えればかわいそうなんですけども。それでも「うざいっ!」と思えてしまうのは、女の子側に肩入れしすぎなんでしょうね(笑)いや!もちろん男の子たちも大好きですけどね!!あと、それぞれの家庭環境にも、身に摘まされますし。もちろん、さまざまな逆境を乗り越え進んでいく5人の行く末に、光照らす未来が広がってくれることも……個人的には、すっごく期待しちゃいます!
(C) 2006 GONZO / RED GARDEN 製作委員会
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