現在、テレビ大阪・テレビ東京・テレビ北海道・テレビ愛知・テレビせとうち・TVQ九州にて、毎週日曜日朝9時30分から放送している「最強武将伝・三国演義」。同作品が、10月1日(金)より、キッズステーションでも放送がスタートする。キッズステーションでの放送から新たに見始める方たちのため、同作品の魅力を今年デビュー50周年を迎えられた主題歌『風の会話』を歌うささきいさおさんにうかがった。
時代を超えて愛され続けるアニメソングとは
−−今年「デビュー50周年」を迎えられました。まずはおめでとうございます!月並みな質問ですが、「気がついたら50年経っていた」という感覚なのでしょうか?
本当にその通りですね。みなさんに「おめでとう」と言われますけど、自分の中の感覚としては、まだ20年経ったかくらいなんですよ。周りに言われて「あぁ、もうそんなになるのか」って感じです。
−−気がついたらと思えるくらい、濃密な日々だったように想像してしまいます。
古典芸能やクラシックのように同じことを繰り返し勉強してゆく…そういう安定した環境にどっぷり浸っているのは自分の性格に合わないというか。自らの意志や感覚が、自分自身を「前へ、前へ」と突き動かしていくんですよね。そうしないと自分で飽きちゃうし、まわりからもすぐに飽きられちゃうから。
−−ささきさん自身、つねに時代の流れを見据えながら歩んでこられたと思います。
僕は最初ロカビリーからスタートしました。でも、当時ビートルズの登場とともに、自分の好きなロカビリー・スタイルが古いものになってしまったんですね。自分では「古い」と思っていなくとも、時代が勝手に古くしちゃうんですよ。そういう時代の流れをつねに感じながら、自分もその川の中を日々泳ぎ続けてきました。
−−積み重ねてきた歴史の重みを活かしながら、それと同時に、新しいことにも挑戦し続けている。それが“ささきいさお流”かなという気もしています。
つねに新しいことには興味を持っているんだけど、新しいことを始めたら始めたで、「その中で一流になりたい」という気持ちを強く持ってしまうから、自分がそのスタイルに慣れるまで勉強し続けてしまう性格なんですよ。ときには追求しすぎて失敗したりもしましたけど(笑)。
−−役者業に対しても、いつも精力的にぶつかっています。
自分としては、たえずいろいろな役柄に挑戦し続けていたいんだけど、まわりがベテラン扱いをしちゃうから思ったようにできなかったりもします。僕自身は、今でも姿勢低くチャレンジし続けたいなと思っているんだけど、そこがジレンマでもあるんですよね(笑)。
−−そこは、「現場の空気に触れてこそ」のささきさんらしいスタイルですね。
たとえば、アニメソングばかり歌っていると歌謡曲も歌いたくなる。僕は両方好きだから、それぞれを突き詰めたくなってしまう。しかも僕の性格だと、片方に力を注いでいくと、もう片方のことをポンと忘れてしまうことがあるんですよ(笑)。今年の夏も色々なイベントでアニメソングを歌う機会をたくさんいただきました。中には歌詞を忘れてしまっていた曲なんていうのもあるんですが、ファンの人たちはみんなフルコーラスで歌詞を覚えてるどころか、かけ声まで全部熟知してるんですよね。おかげで、あの一体化したステージが実現するんです。
−−アニソン・イベントの場合、あの一体化を楽しんでいる方が多いですからね。
30年以上も前に歌っていたアニソンが、いまだに歌い続けられてる理由はそこなんだと思います。先日も上海や香港に行ってきたんですが、日本語で一緒にアニソンを歌ってくれたんですよ。あらためて、アニメやアニメソングが、とても友好的な文化交流の一翼を担っていることを実感しました。これからも機会があったら足を運びたいなと思っています。アニメという作品を通し、人種や文化・風習の違う人たちが理解しあえるって素晴らしいことじゃないですか。
歌はイマジネーションでいくらでも深くなる
−−ささきさんの歌った主題歌『風の会話』は、とてもスケール感あふれる雄々しい楽曲として完成しました。
阿久悠先生の書いた歌詞だけを読むと、とても解釈の難しい面があるんですね。その歌詞に作曲家の鈴木キサブローさんが、本当に素敵なメロディーを乗せてくれて、さらに編曲を担当した山下康介さんが、「まさに悠久の中国風」というアレンジにしてくださいました。おかげで、聴いた瞬間から「まさしく「最強武将伝・三国演義」の主題歌だね」という形に仕上がりました。
−−ささきさんの歌声も、雄大な楽曲へ雄々しき表情を与えゆく大きな魅力になっています。
僕はあまりせこせことした歌は好きじゃないんですよ。むしろ、こういう大きなスケールを持って歌える楽曲が大好きなんです。『風の会話』は、その雄大さを出さないとそぐわない楽曲ですからね。
−−作品も壮大な叙事詩のような作品で、物語も歌もスケール感がポイントになっている印象を受けました。
そうなんです。だからこの曲を歌う前にお客さんに説明を入れるんです。「中国の大草原を、何十万頭もの馬がダァーッと天下を取るために走っている風景を想像してください」というように。そうして頭の中に風景や絵を描いたうえで『風の会話』を聴くと、より聴いた人それぞれの頭の中で舞台環境が広がり、臨場感を持って楽しめるんです。そういう魅力をこの歌は持っているんです。
−−オーケストラを用いた演奏も、かなりの迫力でした。
本当に伴奏の存在感は凄いですよね。おかげで歌う側の気持ちも、どう高めていくのかが大切になっていきます。僕の場合、「宇宙戦艦ヤマト」を筆頭にフル・オーケストラで歌う機会が昔から多かったので、けっこう鍛えられました(笑)。フル・オーケストラをバックに歌う場合、歌声や歌い手側が相応の存在感を出さないと楽曲の迫力に溺れてしまうことになるんです。『風の会話』を歌うときにも、身体や歌声をダーッと雄大に、大きく見せながら歌いあげました。こういう歌の場合は、歌声のみならず、見た目的な面でもスケールを大きく表現していったほうが映えるんですよ。
−−昔のアニソンって、贅沢な作りと言いますか、フルオーケストラを使った楽曲がけっこうありました。
「宇宙戦艦ヤマト」の歌入れをするとき、正直、当たるか当たらないかわからない作品として最初は制作していたんですよ。それでも、「この作品のスケールなら、歌も音楽もスケール感があふれてなきゃいけない」「ケチケチせずに良い音楽を作ろう」という姿勢のもと、ものすごい人数の演奏者を集めたフル・オーケストラ体制で演奏を録りましたからね。実際に生音で録ると、電子楽器では絶対に作れない、広がりや倍音を持ったアコースティックな音の響きが生まれるんです。その音の迫力に僕自身の気持ちが負けないように、存在感を出すことからいろいろと心がけたり、ダーッと攻め込むような楽曲だったら、自分も攻め込んでゆく意気込みのもと歌ったり。そういう経験を重ねてきたことが、今でも活かされていますし、自然と僕の中の想像力も掻き立たさせますからね。
普遍の安心感
−−『風の会話』を歌うときにも、「最強武将伝・三国演義」の世界観を頭の中に描きながら望んだのでしょうか?
歌うときは、雄大な三国志の物語を頭の中に描きながら歌いました。例えるなら、映画「レッドクリフ」の世界観のように、スケール感あふれる舞台劇として、頭の中に思い描いていくような感覚で。先日、テレビで京劇の「三国志」を観たんですよ。ほとんどセットらしいセットがなく、役者陣の語り部だけで物語を進めていくわけですよ。でも、三国志の世界観を知っている人たちなら、その風景が頭の中にリアルな景観として蘇ってくる。それこそ巨大な火が上がる戦いの場面でも、赤い照明が揺れ、その模様を役者が語るだけで、その風景が臨場感と壮大な迫力を持って頭の中に広がっていくような。
−−その感覚、わかります。
中国の方たちって、物語を忠実に再現してゆく傾向が強いんですね。「最強武将伝・三国演義」も、僕らが馴染んできたあの物語がそのままアニメーションの映像として描かれていくから、良い意味で安心感を持って見られるんです。今のアニメーションを見慣れている人たちからすれば、絵のタッチ的には違和感があるかもしれません。でも、絵のタッチも、内容も、まるでドラマを観ているように観ているうち次第に引きこまれてしまうんです。そこが、物語性がしっかりしている作品だからこその面白さだと思いますね。
−−世界観を想像させるという面では、『風の会話』の歌詞も同じじゃないですか?
その通りですね。聞き手側が、どういう感覚を持ってこの歌詞の世界観を受け止めるのかは、とても大事なことです。僕も最初は、「なんで“風”なの?!」と思いました。でも、歌っていくうちに、その風というのは、あるべき父親の姿じゃないのか。「そんなことを阿久悠先生も言ってたなぁ」と思い返したりしました。今の人たちは、その字面だけで思いを理解しようとするばかりで、その裏の意味まで理解しようとしないと思うんです。同じく、字面だけで表現する歌ばかりにもなっていますし。「今の歌は字面だけで、言葉の裏に含んだ想いがない」と阿久悠先生も言っていました。だけど『風の会話』にはそれがあるからこそ、僕ら歌い手も、聴いている側だって、いろいろ想像を巡らせながら理解しようとしていくし、それが歌が醸しだす奥深さに繋がっているんです。そのために、多少浸透するまで時間がかかろうと、それを表現することこそ大切だと思っています。
−−奥深い歌ほど、表現するうえでは歌い手冥利を感じませんか?
こういう“裏”を感じさせる歌ほど、歌い甲斐があるのは確かです。と同時に、生で表現する上での怖さもありますね。
−−えっ、そうなんですか?!
「宇宙戦艦ヤマト」もそうなんですが、スケール感あふれる楽曲の場合、お客さんたちの中にも壮大な景観が見えているから、その期待にそえるだけのスケールを持ってこちらもダ〜ンと歌わなきゃいけないんです。その心地好い緊張感があるからこそ、今でも歌に対して真摯に向かっていけるわけなんですが…。この『風の会話』に関しては、聴いてくださった方々に「爽やかだ」という感想の声をいただくことが多いんです。とくに年配の方には、「なんで、この歳で、ここまで爽やかに歌えるの?」と驚かれたり。でも、その言葉が僕には嬉しい響きでした。何故なら僕自身が、『風の会話』を聴いたときから、「これは爽やかな、雄大な自然の香りを運ぶ生きた風でなきゃいけない。だからこそ、爽やかに歌うことが一番似合う表情だ」と思い、歌ったからなんです。だから「爽やかだ」と言う声をいただくたびに、「あっ、伝わったんだな」という嬉しさを覚えています。
−−同じ草原でも、緑の大地を吹き抜けるような印象を受けました。
枯れ草の草原や赤土の大地よりも、青々とした草原の中を風が吹き抜けるほうが似合うじゃないですか。青々とした大地を吹き抜けてゆく風を感じるからこそ、生きていくうえでも前を向いていける。今で言うと、けっしてビルの谷間を抜けてきた風ではなく、ある意味、神様がフゥ〜ッと吹き込んだ息吹を持った風のような感じですよね。
今の時代だからこそ嬉しいアニメ
−−2曲目に収録した『死ぬほど抱きしめて』にも、スケール感を覚えました。
こちらの歌入れはけっこう苦労しました。と言うのも、ディレクターの方に、「この曲は朗読するような感覚で歌って欲しい」と言われたからです。確かに朗々と歌ってしまうと、どこかあざとさの出る歌詞ですし、僕は阿久悠先生に「残り続ける想い」を託されたような気持ちもありました。それは『風の会話』も含めて。だからこそ、その責任感を背負い、想いをしっかり汲み取りながら歌いあげました。
−−10月1日より、キッズステーションで「最強武将伝・三国演義」の放送がスタートします。ぜひ、見どころを教えてください。
今の時代、こういうドラマを感じさせるアニメがあるって嬉しいですね。けっして衝撃を受けるというインパクト勝負の物語ではないけど、壮大なスケールを持ったドラマとして、見始めたら引きこまれてしまいます。そういう意味でも、がっちりこの世界を受け止め、浸ってもらいたい作品だなって思います。『風の会話』ともどもよろしくお願いします!
TEXT:長澤智典/PHOTO:西村康祐
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