エキサイトアニメトップ > インタビュー > 「そのときがきたら〜映画監督山中貞雄の青春〜」園田英樹×松本梨香

4月3日(土)から11日(日)にかけて、座・高円寺1を会場に、カラフル企画の第2弾公演「そのときがきたら〜映画監督山中貞雄の青春〜」が上演になる。エキサイトアニメとも親交の深い松本梨香さんがキャストで登場していることから、今回、作・演出家の園田英樹さんと松本梨香さんの対談が実現。お二人に、舞台「そのときがきたら〜映画監督山中貞雄の青春〜」について、熱く語っていただきました。


早熟の天才監督、山中貞夫監督への想い…。

そのときがきたら〜映画監督山中貞雄の青春〜
映画を愛し、家族を愛し、仲間を愛した男がいた。
若き天才と呼ばれた映画監督、山中貞雄。
現存するフィルム、わずかに3本のみ──。

「生きていたら、黒沢明や小津安二郎などと並び称される、日本を代表する映画監督になっていただろう」
と言う声も多い、天才映画監督、山中貞雄。彼は28歳という若さで亡くなった。
その生涯に撮った映画は26本。しかし、そのうち現存するフィルムは『丹下左膳余話・百万両の壺』『河内山宗俊』『人情紙風船』のわずか3本のみ。

戦争へと向かう昭和初期、多くの若者たちが時代の波に飲みこまれていく中、映画という夢に向かって駆け抜けた、山中貞雄の青春像。
彼が本当に撮りたかったものは何か。そしてどんな思いでこの世を去ったのか。
彼の思いは時を超えて、今も生き続けている。

公式サイト
■日時
2010年4月3日(土)〜11日(日)
■会場
座・高円寺1
■作・演出
園田英樹
■出演
西條義将モダンスイマーズ
西山水木ラ・カンパニー・アン
田中優樹
各務立基花組芝居
斉藤佑介
清水理沙
松本梨香(Wキャスト 4/9以外出演)
人見はる菜(Wキャスト 4/9のみ出演)
山増 圭エビビモpro.

−−早熟な天才監督と呼ばれ、昭和初期の映画隆盛期に26本の作品を制作。しかし、そのうち現存するフィルムはわずか3本のみ。戦渦に巻き込まれ、28歳という若さでこの世を去った山中貞雄。まずは、彼を舞台の題材に選んだ理由から教えてください。

園田英樹さん(以下 園田):山中貞雄監督の作品自体は、フィルムセンターで上映されていた『丹下左膳余話 百万両の壺』など観たことがあり、存在も作品も知っていたですが、彼の詳しい背景までは知らなかったんです。でも何年か前に、山中貞雄監督の甥に当たる加藤泰さんという映画監督がお書きになった「映画監督 山中貞雄」を読み、彼の生きてきた背景をいろいろと知ることが出来ました。
山中貞雄監督は、生涯26本の映画を撮影しながらも、現存しているのは『丹下左膳余話 百万両の壺』『河内山宗俊』『人情紙風船』の3本しかないんです。彼は映画界の中でも、すごく期待を持たれていた早熟の天才監督でした。でも、時代の波(戦争)に飲み込まれ、28歳にして貴重な才能が消えてしまったんです。
我々は、こういう人たちが居たからこそ、今こうやって作品を作れているわけであって、ましてや自分たちは、なんて恵まれた時代の中で創作を謳歌しているのかを、彼のことを知れば知るほど強く実感しました。僕らは映画に関わりを持ちながら、情熱を持って作品作りをしている人間じゃないですか。だからこそ山中貞雄監督もきっと、死地となった戦場へ向かいながら、無念の想いを抱いていたと思えて仕方がないんです。そんな想いが、「映画監督 山中貞雄」を読みながら僕の中へ伝わってきました。
その経験をきっかけに、「山中貞雄の想いを芝居にし、彼の存在や生き様をもっともっとたくさんの人たちに知って欲しい」。そう思ったことが、この芝居を生み出す最初のきっかけでした。

−−そこから、どんどん山中貞雄監督のことを調べ始めたわけですね。

園田:山中貞雄監督の手がけた映画の“脚本集”が全集として3巻出ているので、すべて読みましたし、「評伝 山中貞雄」という本など、彼を題材にした本がいろいろあったことから、読み漁っていきました。しかも資料を探せば探すほど、彼を悪く書いた文章が一つもないところにも強く興味を惹かれていきました。それこそみんな、「本当にあったかい男だった」と書いてるんですね。そうやって山中貞雄監督のことを知れば知るほど、「彼に会ってみたい」と思えたし、そんな魅力的な人物だからこそ、「絶対に芝居にして動かしてみたい」と思うようになっていきました。

−−山中貞雄監督は、争いの地で亡くなってしまうよう、悲しい結末を迎えたわけですが、軽く稽古の模様を観させてもらった場面では、ドタバタとした騒動を生みながらも、家族愛的な微笑ましいエピソードが描かれていました。この舞台の中へ、どんな悲喜こもごもなドラマが映し出されていくのか、すごく興味を持ちました。

園田:実際に生きていた人なので、史実を基にしながらも、物語を作っていく中での細かい工夫はいろいろとしていきました。
山中貞雄監督の兄弟には、市太郎という行方不明になっている遊び人がいるんです。彼の場合、記録が残っていない分いろいろ想像を膨らませてゆく余地があると思い、この物語には彼を博打打ちとして登場させています。そんな彼の存在が、家族間の絆を描きあげてゆくうえで、面白さを与えてゆく要素になりました。だからこの物語には、山中貞雄監督の映画に賭けた情熱はもちろん、彼と家族との関係性なども多く描き出しています。

このキャストで演じるということは…すごい芝居になりそうだ!

−−具体的な脚本制作に入ったのは、いつ頃からだったんですか?

園田:先に、「そのときがきたら〜映画監督山中貞雄の青春〜」というタイトルを決めました。本当なら昨年中に台本を書き上げ、あらかじめキャストのみなさんへ台本を渡し、3月から始まる稽古へ備えていただこうと思っていたのですが…台本が上がったのは、稽古初日でした(笑)。普通ならまだ“本読み”の段階なのですが、今日(取材日は稽古3日目、つまりこの日の2日前に台本が渡された事になります)時点で、すでに“立ち稽古”にも入っているよう、かなり力を持った役者さんたちが揃っています。なので僕自身も、「これは凄いことになってきた。まだ作り始めて3日目なのに、こんなにも面白くていいの?!これは、今後の稽古を通して完成度の高い作品を作りあげてゆくことが楽しくなっていくなぁ」と、早くも楽しみながら演出できている状態です。

−−梨香さんは、この物語のお話をいただいたとき、どんな感想を持ちました?

松本梨香さん(以下 松本):今回のお話の舞台になっている昭和初期は、おじいちゃんやおばあちゃん、両親だって実際に生き抜いてきた時代です。そういったところに、まずは興味を惹かれました。でもそれ以上に、園田さんの熱い心に強く共感したと言うか。
園田さんは、私の初主演作品「絶対無敵ライジンオー」のシリーズ構成を担当されていて、その頃からのお付き合いなので普段から「園ちゃん」と呼んでいるよう、身内の一人のような関係なんです。その園ちゃんが、「この物語をしっかり一つの作品として脚本できたら、これは絶対にすごい作品になる」と熱く語り続けていたのを、いつも横で聞いていたんですね。その熱い気持ちをぶつけた舞台に声をかけていただけたことだけで、わたしとしてはもぅ嬉しかったです。

−−園田さんと梨香さんは、古くからの繋がりなんですね。

松本:ホント、ファミリーみたいな関係ですね。年齢も、立場もまったく異なるんだけど、昔から仲良くさせていただいてるし、役者と脚本家という立場であるとはいえ、そこには一切の壁が無いと言うか。一緒にゼロから物を作っている仲間や同志という関係なんです。
今回のお芝居に関しても、実は初稽古のときに初めて顔を合わせたキャストも多いんです。でも、今日(稽古3日目)の時点ですでに、お互いに熱い気持ちを交わし合ったり、互いの演技を自然と支えあってゆくチームワークがすでに出来つつあるんです。それくらい心遣いあふれる関係を作りあげているのも、役者さんたち自身の経験や実力はもちろん、園田さんの存在も大きいと思います。

−−知り合って間もない間柄だなんて、この稽古を観ている時点では、まったく感じませんでした。むしろ、だいぶ稽古を重ねてきたような印象でした。

松本:なんか、あっと言う間に壁を取っ払い、仲良くなれる魔法をかけられたみたいな関係ですね(笑)。実際の稽古内容にしても、3日目の内容とは思えないって言うか。すでにみんなが、台本に書いてある言葉以上の表現を演技やアドリブ混じりのセリフとして発しながら、どんどんこの物語へ幅や深みを与えてるんです。それくらい、集まった役者陣のセンスがいいってことなんでしょうね。自分も含め(笑)。一応、自分も入れておかないとね(笑)。

一人3役4役を演じるのは当たり前!

−−観ていて気になったのが、みなさん一人何役も演じられていますよね?見学したのは一場面のみだったので、全体の繋がりはまだわからなかったとはいえ、それぞれが演じてゆくキャラクター面にも、いろいろ興味惹かれ続けていました。

松本:この舞台は、新しいものへ挑戦しようとしていますからね。一人3役4役を演じるのは当たり前。一人で5役以上を演じる人がいたり、もっと言えば、ガヤ的な面も、その流れの中次々アドリブでみんなが演じていくよう、1本の物語の中、一人一人がたくさんの役柄を演じていくんです。それくらい自由度も高いですけど、高い表現力も要求されるんですよね、この舞台には…。

園田:今回は、8人のキャストが登場します。でも、一人として「休みがない」と言うか、ほぼ出ずっぱりの芝居になっています。

松本:面白いのが、一人何役も演じるとはいえ、それぞれの人の演じる役柄には共通性や繋がりがあるってことなんです。たとえば、「オズの魔法使い」のお話で、日常に登場する人たちが夢の国では魔法使いになっていたりするみたいな。何かしら繋がりを持った役柄を何人も演じていきます。そこも、ぜひ注目していただきたいところです。むしろこのお芝居、舞台演技や役者になりたい人なら、すごく勉強にもなると思うので、そういう人には絶対に観て欲しいですね。

園田:このお芝居、映画界に実際に存在した人たちもたくさん登場します。小津安二郎監督やマキノ省三監督などなど。実際に山中貞雄に関わった人たちを登場させていくので、当時の映画界の時代背景もいろいろ見えてくると思います。だから、映画関係に深い興味を持ってる人たちには、その当時の背景も窺い知れますし、大正時代から昭和初期、そして第二次世界大戦へ向かってゆく、日々の生活の中へ暗い影が落とされ、誰もがその空気の中へ飲み込まれてゆく。そんな時代背景も、山中貞雄監督の生き様を通して見えてくるよう、そこも大きな見どころの一つになっています。

−−実際に戦場で命を失くしているよう、山中貞雄監督自身は悲しい結末を迎えていくわけですが、舞台自体は、その悲しさばかりを追いかけたものではないんですか?

園田:山中貞雄監督の生き様は、こうやって今でもいろんな人たちの中へ語り継がれているよう、むしろ、彼の“映画に賭けた熱い情熱”が伝わっていく内容にしています。

松本:この舞台を演じながら「いいな」と感じているのが、貞雄監督の家族が持っていた温かな関係性です。中には破天荒な生き方をしている兄弟も出てくるよう、ときには「バカヤロ〜!!」と喧嘩もしていくんですけど、そこにも確かな家族としての絆が見えてくるというか。あらためて「家族ってこうなんだよなぁ」という温かな家族愛も、この作品からは伝わってくるはずです。そして最後は、ジ〜ンと来る内容になっているので、絶対にこの芝居は観たほうがいいですよ。しかもこれだけの実力派揃いの役者さんたちが演じるんだから、絶対に面白くなるはず。観ないと損すると、演じながら、わたしはホントに思っています。

歌って踊ってミュージカル?!

−−梨香さんは、この物語のどの辺に面白さを感じているのでしょうか?

松本:映画を作ることの楽しさはもちろん、人と人とが何かのために一生懸命になってゆくって、なんかいいな〜って言うか。映画を作るって、こんなに大変なんだけど、こんなにも楽しいことなんだというのを、今は実感しながら演じてます。

園田:不思議な縁だと思ったのが、今回稽古の練習をしている場所が、廃校になった中学校の校舎を改良したところなんですが、この中学校が立つ前は映画の撮影所だったそうなんです。それを聞いたときには、なんか運命を感じましたね。

松本:そんな背景を持った場所でこの舞台の稽古が出来てるなんて、なんか素敵ですよね。あと、今回の物語は京都を舞台にしているので、みんな京都弁でしゃべるんですよ。

園田:実際に京都の方に台本のセリフをチェックしていただき、京都弁に直してもらったんです。

松本:この作品、観てると絶対に元気が出ると思います。今、元気を無くしている人とか、悩みを持ってる人などが観ても、絶対にやる気や元気が出てきます!

園田:キャスト陣がビックリしていたことが、この舞台には、ミュージカルのように歌い踊るシーンがいろいろとあることです。

松本:初日に台本をもらってビックリですよ(笑)。だって、いきなり“歌”“踊り”って書いてあるんですよ!思わず、「えっ?!歌うんですか?踊るんですか??」と聞き返しちゃったくらいですから(笑)。

園田:稽古3日目とはいえ、みんなアドリブ混じりに歌い踊ったりしてます。それが意外と良くて、ホントここには能力の高い役者が揃ってるんだなぁと思いました。

松本:それに甘んじないでください(笑)。私なんてソロで歌って踊る場面があるんです。

園田:松本梨香の歌と踊りは、絶対見どころですよ(笑)。

松本:もちろんがんばりますよ!! むしろ、「演劇ってこんなに楽しいんだ」というのが伝わってくる舞台だから。だって、役者さんたちが認める役者さんたちばかりが揃ってるんですから。

−−そこは、稽古を観てても伝わってきました。

松本:みんな何をやっても受け止めてくれるし、何かアクシデントが起きても、すぐに機転を聞かせて拾ってくれるんです。しかもその場の雰囲気も、アドリブでガンガン広げてくれるんですよ。

園田:役者陣みんなのレベルが相当高いから、かなりハイレベルな物語になっていきそうです。

最後にはホロッと涙する…心揺さぶる舞台を観てもらいたい!

−−この物語、とても“青春群像”の見えてくる内容じゃないですか?

松本:そうですね。今、人生でいろいろ悩んでいる人や、何かへトライしようと迷っている人たちには、ぜひ観てもらいたいですね。かなり元気をもらえる舞台になると思うので。

園田:いろんな人情劇を観せつつ、最後にはホロッとさせます。まして、幅広い層の人たちに支持を得ていける作品だから、ぜひ自信を持っていろんな人に伝えたいし、観て欲しい芝居だなと思っています。ぜひ劇場へ足を運んでください!

TEXT:長澤智典

 
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