最近ではJAM Projectのメンバーとしても忙しく動いている福山芳樹さん。彼の通算5枚目となるアルバム『YELLOW HOUSE』が、8月22日に発売となる。ここでは福山さんに全曲解説を実施。1曲ごとに込めた深い想いの数々へ、存分に浸ってくれ!!
福山家半径300m内の物語
−−福山さんの新機軸を打ち出したアルバム『YELLOW HOUSE』の完成、おめでとうございます。まずは、このアルバムが誕生するまでの経緯から教えてください。
「武装錬金」のオープニングテーマとして流れていた『真赤な誓い』を発売したのが、昨年11月のこと。その楽曲の歌唱依頼の話が来たのはちょうど前アルバム『ALLEGORY』を作り終え、発売記念のツアー中の頃…かな。当時はメンバーたちと、「次のアルバムはアコースティックな色合いを持った作品にしよう」という話をしてたんだけど、そこに「疾走感を持って勢いのある歌をお願いします」と依頼が来ちゃったんで(笑)。それならばと、これまでの福山芳樹らしさを持つ『真赤な誓い』を作りあげたんだけど。「じゃあこの楽曲を、どうアコースティック色を押し出した新作アルバムの中に入れ込むか…」ということで、そこからいろいろと試行錯誤を始めたわけなんですよ。
実はその中から生まれたテーマの一つが、アルバムの軸にもなっている“半径300m内の物事をテーマにした歌”ということ。そこから『YELLOW HOUSE』の制作へ入っていったわけなんです。
『始まりの日』
−−ここからは、アルバム『YELLOW HOUSE』に収録した全12曲の魅力を、一つ一つ紐解きながらお伺いしたいと思います。まずは、冒頭を飾った『始まりの日』ですね。
この楽曲は、『真赤な誓い』を制作していた時期に、同じように浮かび上がった楽曲でした。疾走感を持った作品に仕上がったのも、『真赤な誓い』を作りあげている頃に生まれたからでしょうね。
裏話をすると、じつは最初の段階で1曲目の候補は、続く『RISING SUN』だったんです。だけど、『始まりの日』のイントロにギター1本で歌う形を加えたら、「これは1曲目に相応しい」と直感。そこから1曲目を飾る歌として格上げになりました(笑)
歌詞は、僕の口から言うのもおこがましいんですけど。。。これは、福山芳樹自身のことです。福山恭子が、「お前は歌う使命を持って生まれてきたんだから」と、歌詞を通し僕自身に訴えかけているんです(笑)。まさにこの中には、“福山芳樹の歌に賭ける想い”が濃縮されています。
『RISING SUN』
−−こちらも、疾走感を持った楽曲に仕上がりました。
あの駆け上がっていくようなリズム、じつは馬が駆けてゆくイメージなんです。歌詞は、ちょっとファンタジック性を持った、“馬に乗ったときの幻想的な風景”を描いてると言うか。そうだなぁ、“『ネバーエンディングストーリー』の馬版”と捉えてもらえたらいいかな。
−−なぜ、“疾走する馬の姿”だったんですか?
うちの娘がね、今、馬に乗ってるんですよ。そこから出てきたようで、一見ファンタジックな歌に見えるけど、じつはとっても身近なところからモチーフは生まれてるという。これもまた、僕の半径300m内の生活にしっかり納まる歌ですからね(笑)
『My Yellow House』
−−この楽曲は、つい最近まで暮らしていた家のことですか?
そう。ここにはハミングバードとしてデビューした頃からだから16年間は住んだのかな。もちろん、すっごく愛着のある家でした。さすがにジャケットのよう、あんなに綺麗な家ではなかったんですけど。。。なんでイエローハウスかと言うと、あるとき大家さんに「家壁もボロボロになってきたので、ペンキでも塗りますか?」と言われ、「じゃあ黄色でお願いします」とお願いし、本当に黄色いに家に塗り替えてもらったことからなんです。当時大家さんは、黄色と聞いて「えっ?!」と驚いてましたけどね(笑)
−−それくらい愛着があると、いろんな想い出もその家には詰まってたんでしょうね。
そりゃあ、ねぇ。僕が引っ越す頃には、すっかりボロボロになってましたけど。それこそ昔はハミングバードのメンバーも半分住んでたなんてこともあったし、いろんな人たちも足を運んでくれたし、たくさんの動物も飼っていた。それくらい愛着の深い場所でしたからね。
−−アルバムは、ここからアコースティック色を全面に押し出した、リゾート・ミュージックのような雰囲気にも変わっていきます。
僕は幼少の頃から、ずっと湘南という海沿いの町で暮らしてきたし、引っ越した今でも湘南に住んでるんだけど。これまではどうしても、ハードロッカーというイメージを色濃く出し続けてきました。でも僕の中には、こういうアコースティックな海沿いの風景の似合う音楽性だってあるんですよ。それを今この時期になり、「素直に音楽として投影してもいいんじゃないか」と思うようになり、今回の作品コンセプトの一つでもある、“アコースティックな色合いを持った楽曲集”というところに繋げていきました。
『君の友達』
−−『君の友達』に出てくるのは、湘南の海辺ですか?
そうです。子供が生まれ、その子の首がようやく座った頃に、家族みんなで旅行に行ったんですね。その旅行に行ったときに、書いた歌。今回のタイミングでようやく形にできました。
−−歌詞からは、浜辺で楽しく戯れていく風景が見えてきます。
歌詞に出てくるタコマクラとか、みんな知ってるかな?!これはヒトデの一種。海が近いこともあり、よく子供を連れて湘南の海で遊んでるんですよね。そんな風景が見えてくる歌詞にもなっています。
『スモーキーマウンテン』
−−この楽曲、かなり意味深なメッセージが込められていませんか?
この歌はね、身近な機械の行く末を案じて書いた楽曲なんですよ。
−−身近な機械の行く末…ですか。
たとえばPCや携帯電話にしてもそう。合法/違法問わず、先進国から出たゴミは、巡り巡ってスモーキーマウンテンに辿り着くのかも知れない。以前だったら、その憤りを“怒りのメッセージ”として歌にしていたところだけど。今回はアコースティックな色合いを持った作品ということから、ちょっと面白おかしい歌詞に変えてみました。
−−こういうテーマ性を投げかけることで、あらためていろいろ想うことが起きたのは、自分でも嬉しいことでした。
こういう現実を知ってる人もいれば、知らない人だって数多いと思うんですよ。僕らが日常的に接している物って、いつかは無くなるものじゃないですか。いつかは、どこかに棄てなきゃいけない。本当ならすべて再利用できたらいいんだけど、現実はまだまだ埋め立てていくしかないのも事実。しかも、国内で廃棄処分できないものが、海外に流れていったりもする。もしかしたらスモーキーマウンテンに辿り着いたゴミだって、巡り巡ってまた日本に資材として戻ってくるかも知れない。そんな“人間がゴミと定義しているものだって、以前はみんなの生活の中で大切なものだったんだぞ”ということを言いたくて、ブルーズなロックに乗せながら、この楽曲を唄いました。
『Beautiful Angel』
−−これは、娘さんに向けて書いた歌…ですか?!
まさに、その通りの歌になっています。この楽曲を作ったのは、ハミングバードとしてデビューして1年経ったくらいの頃だったかなぁ。最初の一行と最期の二行は、当時からずっと変わらずある歌詞で、その間を彩る言葉は、楽曲に手をつけるたびに変わっていきました。途中に出てくる♪野生の仔馬のような♪という部分は、最近書きました。ここの部分には、本当に最近の娘事情が出てるかな(笑)
これは、子供を持つ親に気持ちを綴った歌。同じような環境にいる人だったら、すごく共感してくれるんじゃないかな…と思います。
『クランベリーパイ』
−−楽曲はとても暖かいんだけど。歌詞は、長年連れ添った人がいなくなる…そんな環境の中で感じる、ほのかな寂しさが伝わってくる内容になっています。
去年の夏頃に、うちの親父が亡くなり、母親が未亡人になったんですよ。長年連れ添った相手が居なくなると言うのは、一緒に住んでいた恋人が去っていく感じにも置き換えられることから、“それまで当たり前にそばに居た人がいなくなったときの寂しさ”を、歌にしてみました。
−−そんな背景があったんですね。
たとえ人が居なくなっても、その人自身の生活は続いてくわけじゃないですか。たとえ忙しく過ごしていたとしても、ふとした瞬間に『あっ一人なんだよね』と感じ、急に寂しさを覚えることだってある。うちの母親のよう、長年連れ添ったパートナーを永遠に失ってしまうこともあれば、職場の中でも、頼りにしていた人が辞めてしまい、ポッカリ穴が空いてしまうことだってある。そんな一抹な寂しさを、ちょっと楽しい感じの楽曲に乗せて表現してみました。
−−当たり前の存在が、なくなったときの寂しさかぁ。
居なくなって初めてわかることってあるんですよね、当たり前の存在の大切さということを。。。そんな寂しさも、この中には描いてます。
『Help Me』
−−この歌は、気持ちの内側を綴った内容になってますよね。
アルバム中、唯一ネガティブな表情の見える歌になっています。よく、夜一人で家にいると、怖さや寂しさ、不安を覚えたりするじゃないですか。そんな寂しさを描いた歌なんです。
今でもそう、以前住んでいたYELLOW HOUSEのときも、海辺が近いとはいえ、山間な場所ということから、家から一歩踏み出せば、そこは漆黒の闇が広がる世界なんですね。森が持つ闇というのは、永遠の不気味さを備えている。そんな中から生まれた“寂しさから救って欲しい想い”を、この『Help Me』には書きました。
『Blue Onion(Instrumental)』
−−ここで、インスト・ナンバーが登場します。
これは、僕の2ndアルバム『Jungle Lady』を作り、発売記念となる『ゼロになれ』ツアーを演ったとき、そのオープニングを飾るインスト・ナンバーとして作りあげた楽曲だったんです。以前から『どこかのタイミングで作品として発表したい』と思っていたものを、ようやく今回詰め込むことができたんだけど……アルバムに収録する際、この楽曲をどこに配置すれば良いかで、かなり悩みました。結果的に、『Help Me』と『鳥がいない』というマイナー調の楽曲の間にはさむことで、このインスト・ナンバーを活かせる形に持っていけたと思います。
『鳥がいない』
−−この『鳥がいない』は、『真赤な誓い』のC/Wナンバーとして発表していた楽曲です。
これは、「武装錬金」の世界観を意識して作りあげた楽曲でした。「武装錬金」の主人公、武藤カズキはメチャクチャ明るい性格なんですけど、他に登場してくる人たちが、とにかく重い使命を背負った人たちばかり。そういう武藤カズキ自体も、途中までは八方塞がりな環境の中に身を置いてくんですけど。。。そんな主人公の想いを、けっこう重い楽曲として表現したのが、この『鳥がいない』だったんです。
『一週間』
−−まさに、福山家の一週間の生活模様が見えてくる楽曲ですね。
『ここまで開けっ広げにしていいのか』って感じですよね(笑)。二番に出てくるカンブリア紀やデボン紀、ベルムの悪夢などの言葉の意味ってわかりました?まぁみなさんジュラ紀くらいは知ってても、それ以上はよくわからないってことも多いかも知れないですけど。うちは、図鑑を見なくても、そういうことが日常会話として出てくるような家庭なんですよ。だから、2番がああいう“太古からの歴史を描いた”歌詞になったんです。
僕らが今過ごしている時間軸って、太古の時代から続く歴史の大きな流れから観たら、ほんのちっぽけな、顕微鏡で観てさえ見えるかわからないくらいなものじゃないですか。でも、歴史の帯から観たら、とってもちっぽけな点のような僕らの人生でも、やっぱり1日1日をしっかり生きていくことが大切であり、その積み重ねが、その人の歴史を作っていくわけなんですよ。そういう一週間の大切さを、改めて歌にしてみました。
『真赤な誓い』
−−そして最後は、お馴染み「武装錬金」のオープニングテーマ歌として流れていた『真赤な誓い』です。
「武装錬金」の主人公である武藤カズキ。彼に突きつけられた、「これとこれ、お前はどちらを取る。ただし、外れたほうは滅亡が待っている」という命題。そこで彼は「俺は両方とも大事だから、両方を取る」と宣言。そういう、何事に対してもあきらめることなく立ち向かっていく意識。。。それって、僕らの生活の中にも当たり前に出てくることじゃないですか。
−−いろんな選択肢を求められることって、確かにあります。
そのどっちかを選ばなきゃいけない場合、よく人は『大人になれよ』と言うんです。だけど、やっぱり僕も、どっちかなんて選ぶことはできないし、両方を求めていきたい。そんな“あきらめない勇気”を、ここには描きました。
『マクロス』25周年記念ライブ&アルバム発売記念東名阪ライブ
−−8〜9月は、ライブが続きます。
まず、8月18日(土)に東京の日本青年館大ホールにて開催となる『マクロス25周年記念ライブ〜MINMAY meets FIRE BOMBER〜』で、われら福山バンドが演奏を担当することになりました。もちろん自分のステージもありますが、このイベントのために、キーボードを加えた4人編成となったバンドで出演。想い出の地である日本青年館で、再びマクロスの楽曲を歌い演奏できるのも、非常に感慨深いものがありますよね。
−−しかもこのときのメンバーで、そのまま9月に行う東名阪ツアーへ突入するわけですよね。
そうなんです。今回のアルバムの世界観を再現するために、キーボディストを加えました。しかも全員がコーラスができるので、アルバム『YELLOW HOUSE』に描いた楽曲たちを、よりリアルな形で伝えていけそうな予感がしています。もちろんマクロス・イベントと同じメンバーで、福山芳樹の東名阪ツアーもまわる……ということは、そういう楽曲も演ってしまう…かも知れません(笑)。とにかくぜひ、足を運んでください。そして一緒に、盛り上がりながら最期の夏の想い出を作りましょう!
|