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 先に、アルバム『フタリノワタシ』を紹介するうえで公式発表となっている、love solfegeの説明文を引用させていただきたい。

「クラシック音楽とロック、ポップス、R&Bの融合、love solfegeの音楽はまったく新しいコンセプトを創出する。クラシック音楽の理論をマスターし、ゲームや劇版などの音楽制作もこなす作編曲家、松本慎一郎を中心に、声楽を学びクラシック唱法とポップス唱法を使い分け、抜群の歌唱力で様々な表情を演出する観月あんみと、音楽のモチーフになる絵画と作詞を担当し、甘い歌声も披露する鮎で構成される3人組みユニット。さらに多くのゲーム主題歌、キャラクターソングなどで人気の真理絵がゲストヴォーカルとして参加」

 love solfegeの面白さの源郷は、作編曲家の松本慎一郎と、絵画・作詞・歌唱を担当する鮎、“2人の感性がスパークしながら生み出されていくアイデア”にある。love solfegeが作り上げる世界観の根幹を成しているのは、聴覚を彩る松本慎一郎と視覚面を司る鮎が持つ感性。じつは二人とも、相手の生み出す世界観に触発されながら、互いに創作意欲を掻き立てていくところからすべてが始まっている。その話に触れる前に、まずは最新アルバム『ワタリノワタシ』が誕生するまでの経緯から、お伝えしよう。

 再び、アルバム『フタリノワタシ』のコンセプトに対する公式紹介文を、ここで引用させていただきたい。

「本作「フタリノワタシ」はアダムとイブをモチーフに1人の少女の中に宿る2人の人格が描かれる。涙、恋、喜び、悲しみ、憎しみ、絶望、誓い、祈りなど様々なテーマで少女達のストーリーが描かれていく。そして暗闇の中、少女達がかすかな光を求めてゆっくりと歩き出す。その先にあるものは・・・・」

 “アダムとイブ”…何故そのモチーフが生まれたのか、まずはそこから紐解いていくべきだろう。

「一人の人間の中にある“表と裏”の面を、アダムとイブの世界に反映。しかもその中に、『“同性どうしが恋をすることでそうなった”という説を立ててみたら面白いんじゃないか?』ということで、全体のストーリー展開と、それぞれの場面設定を作成。そのうえでラフなイラストを仕上げ、そのイラストをもとに、まずは作曲していただきました。そうやって出来上がった楽曲をもとに、作詞をしたり、詞を他の作家さんに依頼。そこで仕上がった作品の世界観に合わせ、色味をぼかしたり、雰囲気を調整したりなどしながら、最終的に絵を仕上げていく作業を行っていきました。」(鮎)

「アルバムの世界観を最初に決めたのは鮎でした。その頃から『ファンタジック寄りな物語』という話が出ていたこともあり、『“あんみの持つクラシカル歌唱の魅力”も楽曲の中に反映していきたい』とは、最初から思っていました。」(松本慎一郎)

 松本慎一郎が創作をするうえで、つねにインスパイアされていくものは「ヴィジュアル」だと言う。

「“絵”なり“写真”なり、そういったヴィジュアル的なイメージを最初に掲げ、その素材の方向性や意図を、描いたり撮影した人に聴き、狙ったディテールに沿って音楽を創作しながら、最終的に(音楽を携えた)一つの絵に仕上げていく。この『フタリノワタシ』に限らず、love solfegeでの創作のスタイルは、すべてその方法で成り立っています。」(松本慎一郎)

 love solfegeにとって、“楽曲と絵”は欠かせない対を成す存在になっている。もちろん、どちらもlove solfegeの世界観を彩るうえでは欠かせない要素。だからこそ、先に触れたよう“互いの感性をスパーク”させあっていくのだろう。

「love solfegeの場合、重心は“絵”にあるんじゃないかと私は思っています。その絵を完成した姿に導いていくため、さきに“ラフ画と色”を決めてもらい、その姿に似合う楽曲を作りあげていく。その楽曲を聴いたうえで、作品の世界観を象徴する絵に仕上げていく。つまり、『絵と音楽をキャッチボール』しながら作品を制作。結果的に、“絵のほうが重視されていく”と、私自身は捉えているんです。」(松本慎一郎)

「私は、その反対(笑)。先に絵のラフ画を描くとはいえ、その絵を元にサウンドが完成し、そこに歌詞や歌声が加わり、楽曲という世界観が出来上がっていく。フィニッシュさせた絵は、あくまでも“その楽曲の持つ世界観に寄り沿ったもの”という捉え方なので、私の中では“音楽のほうが重心”になっています。」(鮎)

 互いに描きあげる世界観に敬意を払いあっているからこそ生まれる、“感性を対等に交わし合うスパーク&コラボレートな関係”。もちろんその世界観を彩るうえで、『歌声』は非常に重要な要素を担っている。

「視覚を通した印象、耳から入ってくる印象、それらの世界観をより鮮明に印象づけていくのが、歌の役割なんだと思います。」(観月あんみ)

 『フタリノワタシ』では、観月あんみをメイン・シンガーに据えながら、鮎、真理絵と3人のヴォーカリストが、楽曲の世界観を彩る存在として参加している。

「今回の世界観を描くうえで『どうしても異なる3人の歌声が必要』と判断し、この3人のヴォーカリストを起用しました。」(松本慎一郎)

「松本さんは、つねに“歌い手の器量よりも少し上の魅力”を引き出していく楽曲を作ってくださる。そのぶん、出来上がったときの満足度も高くなるんです。」(鮎)

 普段は音楽と絵のコラボレートのもと創作を行っているlove solfegeだが、この『フタリノワタシ』では、音楽+絵に写真という表現形態も加えながら、その世界観を彩りあげていった。

「今回のテーマの中にあったのが、『精神世界の二人の少女と現実世界の一人の少女』。そこから『現実世界の一人の少女を写真を通し描くのも面白いんじゃないか』ということから、一人モデルさんをお願いし、こちらの描き起こしたイメージに合わせポーズを取っていただき、その写真と絵を組み合わせていきました。」(鮎)

 イラスト+写真というコラボレートは、結果的に鮎の中にある世界観を、よりリアルに広げていく成果にも繋がっていった。

「イラストではけっして表現しきれない、実在の人だからこそ出せる表情。それが加わったことで、より世界観を具現化していけたと思います。」(鮎)

 そうそう、love solfegeを語るうえで触れておかねばならないのが、多彩な音楽性の源であり、サウンド面でのこだわりについてだ。

「love solfegeが目指しているのは、“ジャンルに捉われない音楽性”。ただ、音楽の一番基本となる部分は“クラシック”ではないかと私自身は捉えていることもあり、“クラシックをベースに、いろんな音楽スタイルと融合していきたい”とは思っていますし、自分自身もともと実験音楽を好んで制作していく傾向も強いことから、今回はポピュラリティという枠にも挑戦。そこからクラシック+アート+ポップスということで、『クラシカルアートポップス』という方向性も打ち出していきました。」(松本慎一郎)

 “クラシカルアートホップス”を旗印に完成した、アルバム『フタリノワタシ』。クラシックをベースにした音の上に重なりあっていくのは、ポップス/ロック/R&Bなどなど多種多様な音楽性。もちろん、観月あんみのクラシック唱法をベースにした声色も用いているよう、歌声でも美しくも幻想的な世界観から、力強く躍動的な表情まで、それぞれの楽曲に合わせ多様な声彩を描きあげている。さらに、聞き手の心にいろんな想像を掻き立てていく幻想ロマンな詩の世界。まさに『フタリノワタシ』に詰め込まれたのは、“ポップな楽曲美術”として昇華した一つの『アート』だ。

 最期に、メンバーそれぞれに『フタリノワタシ』の魅力について伺った。

「ファンタジックな世界観から現実の世界に切り替わる瞬間。その瞬間を、音楽と絵を通して感じてください。一瞬にしてまわりの空気が変わっていく様は、とても面白い聞きどころになっています。」(鮎)

「写真と絵のコラボレートということで、ブックレット1枚めくるごとに、楽曲の世界観と重なりあいながら、物語が一つ一つ進んでいきます。そうやって世界観が次々と変化していく様を、ぜひ感じてください。」(観月あんみ)

「この作品は、あえて未完成にしています。何故なら、この作品を聴いた人たちが、この中に描いた物語をどう捉えるかによって、いろんな風に景色が変化していくからです。
聴いてくださる方々は、この作品で感じた想いの中に、自分なりの思想や哲学を投影し、それらの想いと物語の世界観を融合させながら、それぞれに『フタリノワタシ』という物語を完成させてください。そのための未完成品だと私は思っています。」(松本慎一郎)

 この『フタリノワタシ』を聴いた、一人一人のリスナーが、アルバムの最後の一片を彩る欠片(ピース)の役割を担っている。ぜひ、あなたなりの欠片を、このアルバムの中にはめ込んでいただきたい。

TEXT:長澤智典

リリース情報

●フタリノワタシ

love solfege
2007.07.04 ON SALE
\3,150(税込)
KDSD-00137

01.フタリノワタシ
02.paradise lost
03.miss rain
04.hands of doom
05.不完全なスペクトラム
06.step by step
07.white lolita
08.林檎、ヒトクチ。
09.たえなる光とともに
10.echoes 〜鏡のオルゴール
11.memories are here
12.燦然と輝く悲しき明日と…

関連リンク

●「フタリノワタシ」特設サイト
●love solfege公式サイト