I'veを創設時から支えてきた歌姫MELL。5月30日発売、彼女の最新シングル「Proof/no vain」に収録の『Proof』は、アニメ「ハヤテのごとく!」のエンディングテーマとして放送中。彼女のアニメ音楽へ賭ける情熱、ぜひこの文章を通し感じていただきたい。
I'veに所属している歌姫たちの意識が、今は一つになっている
−−劇場版「灼眼のシャナ」のテーマ曲に起用、Love Planet Fiveとして発売したシングル『天壌を翔る者たち』が、大ヒットしました。
シングル・デイリーチャートで初登場9位を記録したり、オリコンの無料動画チャートでも、すごいアクセスを記録したり。だけど私たち自身は、ヒットしている実感を覚えることってなかなかないんですよ。本当なら「ヒットの影響を感じてます」と言うべきなんでしょうけど(笑)、昔も今も生活面では何も変わっていないですしね。でも、それでも十分歌えることでの幸福は感じています。
−−MELLさんの場合、ヴィジュアル面での素性がそんな表立って露出してないのも理由にある気がします。
はい。「ハヤテのごとく!」のコミックスを買いに、札幌にあるアニメショップへ行ったときも、ビジョンでLove
Planet Fiveの映像が流れてるのに、誰も気づかないし。店員さんに「コミックスどこにあります?」と聞いても、「そちらです」「あっ、どうも」という普通の会話状態(笑)。以前、島みやえい子さんとも「ある意味、特殊な場所にいるよねえ。」と話したんです。I've自体が昔から何も変わってないから、私たち自身の創作へ向かう気持ちも、制作環境もまったく変わることはない。とくにリーダーの高瀬さんは、昔も今も「とにかくいい曲を書く」という熱意だけで演ってる方。その意識がI've所属チームのみんなにも伝わってることが、変に浮足立つことなくいい環境で制作していけてる要素なんだと思います。
−−I'veのみなさんからは、とても強い結束力も感じます。
Love Planet Five(I've special unit)のメンバーを見渡すと、みんなバラバラな個性なんですよ。けっして寄り添いあってるユニットではない。それでも一体化した魅力を放っていけるのも、一緒に未来図を共有しあえてるからなんだと思います。
一番のきっかけになったのが、2005年に演ったI've主催による日本武道館公演。あのイベントを演り終えた頃から、それぞれの意識が一つの方向へ向いた気がします。それでも相変わらず、個性だけはバラバラなんですけどね(笑)
「無個性」を「個性」に変えるI'veの環境とは、、、
−−MELLさんは、I'veの創設メンバーの一人。
当時は、いろいろなタイプの楽曲を唄う人が少なかったこともあって、私が器用貧乏ぶりを発揮し、その曲の特徴をつかんで必死に歌ってましたけど。今は、I've内にもいろんなタイプのシンガーが増えましたからね。
−−多様な楽曲を歌えてしまう幅広さこそ、MELLさんの強い魅力だと思います。
「作品ごとの色を出した楽曲を、その世界に寄り添った表現で歌う」というのは、ゲーム音楽のテーマ曲を通し鍛えられた部分ですからね。私自身その作品を彩る歌声の演者という意味で楽曲の作詞や歌に毎回望んでいく。その起用さを個性として活かしてくれたのが、I'veなんですよ。
−−それ以前の評価は、違ってたんですか?
I've以前の私は、どんな楽曲でも相応のクオリティで歌えないこともないけれど、突出した部分が見えない歌い手だったんです。だからまわりの人たちには、「君は、どんな楽曲もそこそこ唄えるんだけど、どこか一つがポ〜ンと抜け出してるわけじゃない。そこに君の個性が見えないんだよ」と言われ続けてたんですね。ところがI'veに入ったとたん、器用に唄えるその幅をどんどん求められるようになった。つまりI'veは、「無個性だ」と言われる部分をすべて個性に変えてくれる環境だったんです。それが、いまだにI'veで活動できてる大きな理由なんだと思います。
−−作品の世界観へ徹底して寄り添っていく詞や歌声。そこがMELLさんの魅力だと、僕らは捉えてますからね。
私、「○○のテーマ曲を歌う」となったら、その作品のことしか考えないんですね。「私の歌う楽曲が、作品の世界観を彩る要素の一つになって欲しい」「制作する側も、それを受け取る側も、とにかくみんなから愛される作品になってもらいたい」。そういう気持ちで、いつも制作へ携わっていくんですよ。だから私が唄うタイアップ曲に関しては、極力私の個性は排除し、ひたすら作品の世界観へ気持ちを寄り添わせていくんです。
オリジナルだったら、9割自分が出ますけど、テーマ曲に関しては、9割が作品と重ね合った想い。自分の個性は、そこに1あればいい。その気持ちでいつも制作に向かっています。
『Proof』と『no vain』へ込めた、一つの想い…
−−アニメ「ハヤテのごとく!」のエンディングテーマ『Proof』も、その気持ちで望んだ作品なわけですね。
もちろん。歌詞を書く際にも、ここに「ナギの気持ち」を、ここには「ハヤテの想い」を込めて書きたい。他にも、「マリアや、タマ(笑)の気持ち」も入れたいなど、「ハヤテのごとく!」という作品から得たたくさんの想いが、頭の中をぐるぐる駆け巡っていくんです。
−−それだけいろんな要素が頭の中を走りまわると、まとめるのが大変じゃないですか?
まずは、いろんな想いを心の中へどんどん取り込んでいき、次にリズムを溶かして伝えたい要素を抽出するため、芯となる部分以外を次々と引いていくんです。この『Proof』では、ハヤテくんに夢中なナギちゃんの恋が実っても、結果的に二人の関係が破局しても…たとえどちらの結末になっても、「“2人の強く惹かれあう気持ち”を私は守ってあげたい」という気持ちが最後に残ったんです。だから私は、2人の関係を温かく見守る立場として詞を書き、包み込むような優しい声で歌おうと決めました。
−−ナギちゃんとハヤテくん…2人が互いに強く惹かれあっていく様は、見どころですからね。
本当に仲いいですよね。お互いまだ高校生ぐらいの年で、両親が側にいないこともあり、互いに寂しさを埋め合おうとしているかの様に。そうやって必要としあう関係の大切さを何よりも表現したくて、私は歌詞の最期に「That's
why we are here I Love you(そのために出会った、それが愛するため)」と書きました。2人の結末がどう転がろうと、2人にはきっと「永遠の愛情や友情」が心の中に芽生えてる。そのために出会った証明書が『Proof』であり、2人の出会いはけっして無駄ではなかったという想いが、C/Wへ収録した『no
vain』に繋がっていくんです。
−−そこに、2曲を通した共通項があったんですね。
楽曲自体は対極な表情を持ってますけど、歌詞に込めたテーマは一つ。それが、「守る」ということ。
大事なものを守っていくのは、どれだけ大変で、どれだけしんどいか。互いの関係を作ったり壊すのはたやすいけど、本当はそうじゃない。繋がった互いの関係を守り続けていくことが、何よりも大切。その想いを、この2曲を通し、自分にも問いかけたかったんです。
−−その想いを母親的な視点で描いてるところが、いいですよね。
母性と言うか、上の目線ではなく、下から温かく包んであげる感じですね。ナギちゃんって、すごく温もりに飢えてるでしょ。それを表に出せないからこそ、ツンデレなキャラクターになっていく。その姿が、ものすごく可愛くって可愛くって(笑)。中でもエンディングで流れる映像のとき、ナギちゃんがお腹を出しながらパジャマ姿の寝顔を見せるじゃないですか。あの寝顔を観るたびに、も〜胸がキュンとしちゃうんです(笑)
−−「ハヤテのごとく!」は、いろんなアニメのパロディ要素も楽しめる作品です。
ホント、「どんだけ今日はパロディ・シーンが出てきたんだ」って言うくらい、いろんなアニメ作品のパロディ・シーンが登場しますよね。嬉しかったのが、私がテーマ曲を担当した「BLACK
LAGOON」のパロディが第2話で登場したとき。あのシーンを観たときは、ホント感激しました。
子供にはかなり刺激的な『no vain』
−−『Proof』は、とてもハートフルな楽曲として完成。でもC/Wへ収録した『no vain』は、ハードで躍動的な要素を満載したアップ・チューン。「BLACK LAGOON」のテーマ曲『Red fraction』を聞いてる人なら、共通した流れを感じるぶん、“らしい表情”として捉えることができますが。『Proof』を通し初めてMELLさんを知った方は、かなり驚かれる曲調になっている気がします。
『Red fraction』『no vain』とも、かなり激しい楽曲ですよね。今回、初回限定盤用にPVを制作しました。その映像が『no
vain』なんですよ。この映像、『Red fraction』同様かなり過激な姿として私が映ってますから。『Proof』目的でCDを買ったお子さんが、『no
vain』のPVを観たらかなり驚くと言うか…逆に、「これ、見せていいのかな?!」って感じなんです(笑)。
−−それも、大人の世界の入り口ということで(笑)
「子供の人生も変えてしまえっ!」という、ノリですかね(笑)。私もそうでしたけど、子供って「大人が捉える子供の目線に降りたもの」って、じつは嫌がるじゃないですか。子供は子供なりの目線で、大人の世界を描いた作品を等身大なものとして受け止めようとしていく。そう考えれば、読み聞かせるような内容の映像じゃないから、逆に私のPVは刺激的で良いかも知れないですね。
−−C/Wへ激しい表情を持った『no vain』を持ってきたのも、『Red fraction』の流れを踏襲したことからですか?!
きっと、そうだと思います。そこは高瀬さんが、MELLの魅力の打ち出し方として考えてくださったからだと思うんです。だからこそPVも、『Proof』ではなく、MELLのオリジナル性の強い『no
vain』にしたんだと思いますしね。
「守りたい」…その気持ちを感じて欲しい
−−最期に、あらためて『Proof』の魅力を語ってください。
「ハヤテのごとく!」に示されたテーマ、それが“借金執事バラエティ・ラブコメディ”であり“ハヤテ・イン・ザ・コンバット・バトル”なんです。それらの言葉が示すよう、ハヤテくんもナギちゃんも、子供なりの世界観でいろいろ世間と闘ってるわけですよ。そんな何かに向かって闘い続けている2人を強く叱咤したのが、『no
vain』なんです。人が成長していくうえでは、闘うだけではなく守ることや優しい想いも必要になっていく。それを伝えたのが『Proof』になる。
「いろんなことが起きる今の時代、自分なりにがんばり続けている人の気持ちを守っていきたい」。そんな気持ちを、私はこの1枚の作品の中に込めてみました。「守りたい」という気持ちを、みなさんと一緒に感じていきたいですね。
TEXT:長澤智典
© 畑健二郎/小学館・三千院家執事部・テレビ東京
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