11篇の物語が織りなす幻想浪漫な叙情記
−−何人もの登場人物たちが織りなす“人生劇”を描きあげた、この『Roman』。かなり緻密な構成のもと作りあげてますよね。
なかなか、密度の濃い作品にはなりましたね。もちろん骨格を作りあげながら制作へ入ったわけですけど、全部の楽曲が同時に出来上がったわけではなく、一つ一つ楽曲の骨格を成すパーツを作りあげながら、その作業の中から見えてきたことを元に、さらに楽曲を増やし、そこへ他の楽曲とリンクする要素や仕掛けを施していく。そこで生まれたものを、また元から作ってある楽曲へ反映させたり。。。そうやって、どんどん世界観を広げながら作りあげていきました。
−−もし良ければ、この物語のあらすじだけでも教えてもらませんか?
ごめんなさい、それは出来ません。意地悪な発言に聞こえてしまったら申し訳ないんですけど、この作品を作りながら心がけていたことのひとつが、楽曲どうしの関連性なんです。つまり『この曲とこの曲は繋がってるかも知れない』『この登場人物とこの登場人物の時間軸には繋がりがあるのかも知れない』……など、そういう思わせぶりなキーワードをたくさん散りばめたアルバムだけに、そこは聴いた人それぞれのイマジネーションで世界観を広げていただきたいんです。だからあえて、ストーリーの説明をしたりイメージを限定するような言葉を投げかけるようなことだけはしたくないんですよ。
−−自分の発想で物語の世界観を広げていくって、聞き手が楽しむうえでも大切な要素になっていくぶん、確かにそうですよね。
あえて言うなら、収録した11曲それぞれにテーマがあり、そのテーマにそった楽曲として1曲1曲が成立しています。が、11曲すべて完全に独立しきった物語ではなく、それぞれがいづれかの楽曲へ繋がり得る要素を備えていて、しかもこのアルバムは、永遠に繋がりを持ってループしていく作りにもなっています。実際にブックレットへ施したアートワークでも、朝と夜との繰り返しの中へ物語性を綴った形で表現していますし。
−−歌詞には、あえてキーワードにした謎の言葉も表記。それを並べると…
それは、僕の口からは言えません(笑)。謎のメッセージが隠されてはいますけど(笑)
これは、映像のない大作映画
−−本作では、7名のヴォーカリストや14人の語り部を筆頭に、総勢70名に及ぶ楽団員を起用。それだけのキャストを必要とした作品だったと言うわけですよね。
物語を作りながら、『この楽曲のこの部分へは、この人を配置させたい』というのは考えてました。中でもヴォーカリストや語り部たちは、映画で言うキャストと同じ役割を担ってます。だからこそ楽曲を作る際も、その曲、物語が必要とする声質などを想定しながらキャストを選定し制作を行ってます。つまり、『この曲は誰が歌ってもいい』なんて不明瞭な楽曲は一つもないですし、最初から明確なヴィジョンを持ったうえで、すべてを作りあげているんです。
−−まさしく、これは…。
映像のない映画。サウンドトラックだけで成立している映画。それがSound Horizonの目指し続けてきたところですし、Sound Horizonの世界観を好きになってくれてる方々は、そこを支持してくださってるとも感じています。
−−この『Roman』にしても、一度や二度聴いただけでは全貌はつかみきれないくらい、壮大な世界観を描きあげた幻想浪漫な物語になってますしね。
たとえ、ものすごく博学で感の良い人であっても、1回ツルッと聴いただけで全部をわかり得るような作りにはしてないですからね。まして歌詞カードを観ながら聴いてても、一瞬「?」となるような表現の揶揄も入れてますから、ホント何回も聞き込んでいかないとすべての輪郭は見えてこないと思います。それこそ単語一つを取っても、辞書で調べないとわからないような言葉も出てきますが、それを調べていくと、さらに深く物語を楽しめたり。。。もちろん音楽である以上、眉間に皺を寄せて聴くためだけの作品になどしてませんので、深く考えなくとも美しい旋律を聴いているだけでも楽しめる音楽性を目指しました。
−−過去の作品とリンクしてゆく物語も、けっこうありません?
このアルバムは、自分がSound Horizonとして歩んできた歴史を再確認すると共に、新しい旅立ちに向けての意気込みを込めるという意味でも、集大成的な大作に仕上げています。なので遊び心として、過去に発表した作品との繋がりを予感させる表現や言い回しなども多々出てきます。普段はここまでリンクさせることはないんですけど、あえてこの『Roman』ではやっていますので、ちょっとした表現にもロマンの奥行きがあることを感じてもらえれば、よりこの作品が深く楽しめるのではないでしょうか。
アルバム1枚を通し物語を綴れ織ってゆくSound Horizon
−−11月26日より、来年1月まで続く東名阪ツアー『Roman〜僕達が繋がる物語〜』もスタートします。こちらでも、思いきり『Roman』の世界観を味わえるわけですよね。
今回は『Roman〜僕達が繋がる物語〜』とうたっているように、ステージで『Roman』の世界観を描きあげていきます。過去の楽曲も演奏するかも知れませんが、基本は『Roman』を生で味わっていただきたいところにありますし、CDとはまた違ったステージの魅力を楽しんでもらえたらと思っています。
−−今後もSound Horizonとしては、幻想浪漫な世界観を描き続けていくんですよね。
もちろん。ただし、少しずつだけど新しい表情は垣間見せていこうと思っています。これは一つのたとえだけど、いきなり次のアルバムでSound Horizonが全編ボサノバのアルバムを作ってしまったら、みんなビックリし引いちゃうでしょ。でも楽曲の一部へそういう新しい要素を組み込みながら、徐々に世界観の広がりを見せていきたいとは思っています。音楽性が物語の可能性の足枷になるのは望むところではありませんので。
前作『Elysion〜楽園幻想物語組曲〜』を救いのないダークな作品に仕上げたので、今回も同じ方向性の作品にしてしまったら、そういう世界だけを描く存在とイメージされてしまう懸念もありました。だからこそ当時から、「次に作るアルバムは前向きな作品にしよう」と思っていました。もちろんこの『Roman』の中へも、明るいもの、暗いもの、いろんな音楽性、物語性の種子を蒔いていますので、そこから次へ新しい何かが芽吹いていくかも知れない。そこは今後を楽しみにしてて欲しいところですね。
−−そこは、ホント楽しみにしています。
まだSound Horizonの世界に触れたことのない人たちは、ぜひこの機会に触れていただけたら嬉しく思います。“アルバム1枚を通し物語を紡ぎ奏でるSound Horizon”。その意味に興味を引かれた方は、ぜひ耳を傾けてください。
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