マーク・マンシーナ
ディズニー作品は“アニメーション”、日本の作品は“アニメ”なんだよ
『BLOOD+』の物語を彩るスケール感にあふれた壮大な音絵巻たち。それらの楽曲を手がけたのが、ハリウッド映画のサウンドトラックを数多く手がけているマーク・マンシーナだ。彼が手がけけた『BLOOD+』のスコアたちが、4月26日に『BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1』と題されCDリリースになる。その発売に先駆け、マーク・マンシーナ自身が来日。忙しい最中、彼をつかまえ、『BLOOD+』の音楽面での魅力について話を聞いてきた。
TEXT:長澤智典
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――『スピード』『コン・エアー』『ツイスター』『ブラザーベア』など、ハリウッド大作映画からディズニー・アニメまで数多くの名作たちのサウンドトラックを手がけてきたマーク・マンシーナさんですが、なぜ今回日本のアニメ作品を手がけたのか、まずはそこから聴かせてください。
直接的なきっかけは、音楽プロデューサーのハンス・ジマーから「日本で制作している『BLOOD+』というアニメ作品があり、その音楽を手がける人を探してるんだけど」という話をいただき、ここまでの経緯や作品の概略を聞かせてもらったことからだったんだ。正直なところ僕は、日本のアニメについての知識があったわけじゃないんだけど、ハンスから色々と物語の説明を聞いてるうちに『これはコンポーザーとしてすごくやり甲斐のある仕事だ』と思い、『ぜひ、自分にやらせてくれ』という気持ちから、引き受けたんだよ。
――『BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1』を聴けば一聴瞭然のことですが、収録された楽曲はいづれも、とてもスリリングで躍動的、かつスケール感の大きな楽曲へと仕上がり、しかもどの作品にも“悲哀さや刹那な表情”が含まれていますよね。なぜそのような楽曲たちが出揃ったのかそこも非常に気になりました。
そもそも『BLOOD+』を作るに当たり、制作者側からは「壮大なスケールの楽曲を作って欲しい」という依頼が届いていたんだ。しかもその要望は、僕が普段ハリウッドでやってる映画音楽のスケール感と同じということだったので、まずは興味を抱いたんだよ。と同時に、ストーリーの中身へ僕はすごく切なさを感じた。きっとあなたが感じた刹那さという表情は、僕自身も捉え感じ、表現した『BLOOD+』の持つストーリーから繋がってきたものだと思うよ。
――なるほど、納得です。と同時に、収録したどの楽曲ももの凄い躍動性を持ってますよね。
躍動的な楽曲というのは、得てして音楽へ深みを与えてく部分でもあるんだ。それは映画やアニメーションのスコアではとても重要なことであり、それらの表現媒体だからこそ、出来ることなんだ。僕が今のポップミュージックに一番欠けてると感じている部分がそこなんだよ。それこそ1曲の中で静かな表情を魅せる面もあれば、ものすごく性急な姿も魅せていく。それは、“こういったスコアだからこそ出来ること”だし、そこを僕自身すごく大切にしながら、つねに楽曲へ取り組んでるわけだからね。
――マークさんが手がける楽曲には、つねに“リズムやビート”を感じるんです。その辺も狙いの中へあったんでしょうか?
音楽的な観点から語るならば、躍動性というのは“小さい音から大きい音へ音量が変化していくこと”で表現できる手法なんだ。だけどリズムというのは、それとはまた別のもの。君が感じたリズムというのは、『BLOOD+』という物語そのものがスリリングに展開していく。そこへ上手く寄り添いあった音楽だからこそ律動性を感じたんだと思うよ。求めた答えになってるかな?!
――納得です。最初に『BLOOD+』のストーリーボードを観たり、内容を聴いて感じた印象も、ぜひ教えてください。
物語を見聞きして、一番最初に惹かれたのが“小夜”というキャラクターだった。彼女は、とても魅力的なキャラクターだと思う。その理由というのも、小夜はものすごくいろんな感情を内へ秘めているから。実際に映像を観てると、小夜が出てくるたびに彼女から目を離せなくなるし、次に彼女自身へ何が起こるのか…など、とても気になってしまう。それくらい小夜は僕にとって魅力的なキャラクターなんだよ。もちろん、物語全体にも非常に惹かれるものがあった。でも僕にとって『BLOOD+』と言えば、やっぱり小夜の存在感が一番だね。
――小夜の秘めた感情や強い気持ちが、楽曲制作へインスパイアを促した面もありました?
もちろんそれもあったけど。この物語は、沖縄を舞台にした現代から、ベトナム戦争を軸にしたベトナムでの物語。ロシア革命が起こった時代の風景も伺わせるロシアでの展開など、いろんな時代へ物語が飛んでいくわけだから、そこへ音楽も寄り添う力が必要だった。創作自体は幅広い視点で捉えながらやってたね。
――もしや、物語の舞台となる場所ごとに音楽も考えたりしてたんですか?
じつはあらかじめ制作側からの要望で、「国を意識しないで音楽を作って欲しい」というのがあった。理由は簡単。ロシアやベトナム、沖縄など象徴的な土地へ音楽まで合わせてしまうと、全体的なムードがとてもマンガチックになってしまうという懸念があったから。あくまでも、環境がもたらす雰囲気は映像が受け持つべきところであって、音楽自体はグローバルな視点で描きあげていきたかったんだよ。
――実際に『BLOOD+』をご覧になり、映像と音楽のシンクロに付いてどのような感想を抱かれましたか?
今回のテレビシリーズ用に僕は110分くらいの音楽を作ったんだ。それらをどう場面ごとに入れてくれたのかドキドキして見てたんだけど、ホントにうまく入れてもらったというか。僕はまだ4話までしか見てないんだけど、その4本を観ただけでも、音楽の挿入の仕方はホント見事だと思ってる。
――それにしても、アニメの中であれだけ贅沢に音楽が流れるのも、すごいことですよね。
そうだよね。それだけ制作側が音楽に対しても真剣に取り組んでくれたということだし、その成果がこの作品の人気や支持を担っている要因なんだと、僕は思ってる。
――『BLOOD+』を通し、初めて日本のアニメーションにも関わられたわけですが、今回の経験を機に日本のアニメーションに対する見え方も変わりましたか?!
それは大いにあったね。実際こうやって日本まで足を運んだのも、日本のスタッフ陣と一緒に仕事をしたことがホント楽しかったからだし。こうやって、いいプロジェクトが出来てるからこその成果なんだよ。
――とても嬉しい言葉です。せっかくなのでマークさんが捉えてるアニメーションに対する印象も聞かせてください。
僕が知ってるアニメーションというのは、ディズニー作品だけなんだ。もちろん、ディズニー制作によるアニメーションは大好きだよ。だけど今回日本のアニメへ携わって感じたことは、日本とアメリカでは、同じアニメーションという括りでは捉えられないということ。ディズニーは“アニメーション”であって、日本のは“アニメ”なんだよ。だから僕はまったく違うものとして捉えてる。まして日本のアニメは、とても大人向けになっている。まさに実写映画へ匹敵するクオリティを持ってると、僕は“日本のアニメ”を受け止めてるね。
――じゃあ最後に、マークさんにとって今回のサントラ盤は、どんな1枚へ仕上がったと思いますか?
『BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1』の出来に関しては、非常に気にいってるよ。とくに嬉しかったのが、こうやってサントラ盤が発売になるということ。音楽だけを聞きたいと言ってくれる人はどこの国でも多い。そういった人たちに音源だけを届けられるのはとても嬉しいことだったし、それを形にしてくれた日本のレコード会社や『BLOOD+』へ関わった制作者すべての人たちに、まずは感謝の言葉を述べたい。もちろんみなさんにも、音楽としても楽しんでいただける1枚になっていたら、こんなに嬉しいことはないよね。
――ありがとうございました。ぜひまた日本のアニメに関わってください。
もちろん。また機会があったらやりたいよ。そのときは、ぜひ声をかけて欲しいな。
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